理系人間の生き方

さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白

さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白

今週の読書分。


著者さんは小泉さんの時代に竹中さんの下でいろいろとやっていた人らしいです。
数学科出身の元財務官僚だとか。
で、その時代のことをいろいろと書いている本ですね。暴露本形式とでも言いますか。
郵政民営化の舞台裏とか、埋蔵金問題とか、その辺の話ですね。
改革を推進した人の側の視点のみになるのはやむをえませんが、非常によく書けていると思います。
その点だけでも買う価値あると思いますね。


全体的に官僚に対する不信感/警鐘が記述されている印象ですね。
現在の政治家は役人の代弁者に過ぎないことが多いということ、
役人の実際の政治能力はそれほど高くない(最新の理論事情に疎いとでもいうか)ということ、
政治主導で立案、行政を行うことの困難さ(大臣主導でやろうとしても役人がやらなきゃしょうがないでしょ)ということ、
などが書き綴られています。


それはそれで看過してはいけない、非常に重大で深刻な問題ではありますが、個人的に一番心に残ったのは第一章の記述でした。
著者さんは大蔵省に入省したので、理系である著者さんと文系である周囲との差をなにかと感じていたらしいのです。
で、そのことについての記述がありました。

 狭い専門分野のなかで独自に行うという作業に慣れていたせいだろう。「組織で何とかしよう」という発想や、組織に媚びるという気持ちは、入省当初から全然なかった。
 不遜を自覚したうえでいえば、ゼネラリストの文系の人たちとは違って、理系の私には専門性がある。だから、組織に頼らずともよかったのだ。
(p41)

 東大法学部卒の官僚は、計数には弱い。知識や理論のほとんどは知り合いの学者から仕入れたものだ。要は聞きかじりに過ぎない。
 耳学問では、A、B、Cの三人の学者が同じような意見を言っていたとして、どれが根本の理論かわからない。知ってはいても、本当に理解はしていないので、経験も知識もある上司から根拠を突っ込まれると、最後には「あの学者がそういっていたので」と答えるしかなくなる。これでは上司は納得しない。相手の気分を害し、睨まれる種を蒔くだけだったら、止めておこうとなるのだ。
 その点、計数に強い私は、自分で数式を立てて確かめられる。郵貯金利に関する計算は、日本の学者でもほとんどやっていないほどむずかしく、一官僚の私がやって、簡単なものにまとめたので驚かれた。
(p51-p52)

実に正しい理系の人の考え方だと感じ入りました。
と、同時に、私は自分のことを「理系」って公言するのも憚られるような、いい加減な人間であることを思い知ったような気がします。


いまさらながら、本物になっておけばよかった。


強くそう後悔します。

当時、竹中さんから送られた印象深い言葉がある。
「英語と会計はよく勉強しておいたほうがいいよ」
今でも的確なアドバイスだったと思っている。

私の年から勉強を開始したとしてもモノにはなるまい(笑
やはり若さとは貴重なものだな。